篠田佳男(小林稔侍)は地方都市で父の代からの会計事務所を営んでいる。家族は妻の美津子(中田喜子)、娘の美香(酒井彩名)、そして母の淑子(岩崎加根子)である。しかし、10年前にはもう一人家族がいた。長男の佳彦である。当時15歳の佳彦は何者かによって殺された。残された家族はどこの誰ともわからぬ犯人を恨みながら、10年間を生き抜いてきた。その間に淑子は脳梗塞で倒れ、美香は佳彦の友人・勇太(井澤健)と結婚して東京で暮らしていた。 そんな折、警察から佳男に「佳彦殺しの犯人が捕まった」と電話が入った。美津子と二人で警察署を訪ねると警察官から、別件で逮捕された鈴木という男を取り調べるなかで佳彦の事件が浮上したと説明される。鈴木は佳彦殺しを否認しているが佳彦の爪に残っていた血痕と皮膚のかけらがDNA鑑定で鈴木のものと一致したのだという。取材陣が殺到し、インタビューに答えるが佳男夫婦はいまひとつ実感がわかない。再び警察署に呼び出された佳男と美津子は意外な事実を知る。鈴木は相変わらず殺しは認めようとしなかったが佳彦から現金三千円と高価な腕時計を脅し取ったことを認めたのだ。そんな腕時計を買ってやった覚えのない佳彦は怪訝に思う。さらに鈴木は佳彦が書店で万引きしているところを目撃したと供述したという。佳彦は激怒した。「警察はそんなことを信じるのか」と興奮して詰め寄る佳男の様子は、傍目にも尋常ではなかった…。
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